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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)7166号 判決

原告 鳥山厳也

被告 新井茂 外六名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の申立て

(原告)

「被告らは、原告に対し、各自二、二九四万二、一三八円およびこれに対する昭和四〇年九月一日から支払いずみにいたるまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、被告らの負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求める。

(被告ら)

一  本案前の申立て

「原告の訴えを却下する。訴訟費用は、原告の負担とする。」との判決を求める。

二  本案についての申立て

主文同旨の判決を求める。

第二当事者の主張

(原告の請求の原因)

一  原告は、訴外日本自転車振興会(以下「日自振」という。)の備える選手登録簿に競輪選手として登録され、全国各地で開催される競輪に出場していたものであるが、昭和四〇年八月一一日日自振から出場あつせんを保留され、ついで昭和四二年七月二六日選手登録を消除された(以下これらを「本件処分」という。)。

二  本件処分は、当時の日自振の会長である被告新井、副会長である同伊能、理事であるその余の被告ら全員が役員として関与し、決定したものである。

三  しかし、本件処分は、原告に何ら所定のあつせん保留事由および登録消除事由がないのに決定された違法なものであり、このような処分が行なわれたのは、被告らの故意または過失によるものであるから、被告らは、民法七〇九条、七一九条一項により、本件処分によつて原告が蒙つた損害を賠償する責任がある。

四  原告に生じた損害は、つぎのとおり合計二、二九四万二、一三八円である。

1 原告は、昭和四〇年八月以降競輪に出場できなくなつたものであり、その直前の六か月間における原告の収入は、二〇四万二、八〇〇円(一か月当り三四万〇、八六七円)で、その後昭和四〇年一〇月に二割のベースアツプがあつて一か月当り四〇万九、〇四〇円となり、さらに昭和四三年四月に四割二分のベースアツプがあり一か月当り五八万〇、八三六円となるはずであつたから、原告が自分の意思により選手登録消除の申請をして登録を消除されることになつた昭和四四年二月までの間の得べかりし利益喪失による損害は、つぎのとおり合計一、九三四万二、一三八円である。

(一) 昭和四〇年八月、九月分 六八万一、七三四円

(二) 昭和四〇年一〇月から昭和四三年三月まで三〇か月分 一、二二七万一、二〇〇円

(三) 昭和四三年四月から昭和四四年二月まで一一か月分 六三八万九、二〇四円

2 また、右の期間中の原告の精神的苦痛を慰藉するためには三六〇万円が相当である。

五  よつて、原告は被告らに対し、各自二、二九四万二、一三八円およびこれに対する昭和四〇年九月一日から支払いずみにいたるまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

(被告らの本案前の主張)

本件処分は、公共団体たる日自振が法令の定めに基づいて行なう公権力の行使に当たる行為に該当し、したがつて、その処分を決定するにつき、業務を行なう役員に故意・過失があつたとして、処分によつて生じた損害の賠償を請求するについては、国家賠償法が民法に優先して適用になるので、同法一条一項により日自振のみが損害賠償の責任を負い、被告ら個人が直接原告に対し、損害賠償の責任を負うことはないのであるから、原告の本訴請求は、被告適格を欠く者に対する訴えというべきであり、不適法である。すなわち、

一  日自振は、自転車競技法によりその存立の目的を与えられて設立され、その存続を義務づけられた特殊法人であり、役員の任免およびその資格、ならびにその職務権限、日自振が行なう業務の範囲、内容およびその方法は、同法によつて具体的に定められ、また業務の実施について通商産業大臣の認可を要するなど、国の強い監督を受けるのであつて、このような日自振の法的性格は、これを公共団体であるといわなければならない。

二  日自振は、自転車競技法に基づき、選手の登録、出場のあつせんに関する業務などを行なう(同法一二条の一六)が、選手の登録とは、選手登録の申請をした者に対し、選手資格検定を行ない、その合格者を日自振に備えつけの選手登録簿に登録することにより、競輪選手として、全国各地において開催される競輪に参加、出走し得る資格(同法五条一項)を付与する公法行為であり、これによつて、当該選手は、登録選手たる資格に随伴する諸種の権利義務を有することとなるのである。そして、選手が実際に競輪に参加するためには、日自振が通商産業大臣の認可を得て定めた「競輪に関する業務の方法に関する規程」(以下「業務規程」という。)の定めるところにより、日自振の出場あつせんを受けなければならず、選手に業務規程に定める一定の事由が発生した場合には、日自振は、当該選手に対し、あつせんを保留することができ、さらに、日自振は、自転車競技法五条二項、競輪審判員、選手および自転車登録規則(昭和三二年通商産業省令三九号。以下「登録規則」という。)二一条に定めるところにより、選手に一定の事由が発生したときは、その登録を消除して、選手としての資格を剥奪する権限を有するのである。これを要するに、本件処分は、法令に基づき日自振がその優越的意思の発動として行なう権力作用にほかならず、国家賠償法一条一項にいう公権力の行使に当たる行為といわなければならない。

(本案に対する被告らの答弁および主張)

一  請求原因一の事実は認める。同二の事実中、被告らが本件処分当時、それぞれ原告主張のとおり日自振の会長、副会長および理事であつたことは認める。同三、四の事実は否認する。原告の被告らに対する本件損害賠償の請求は、以下に述べる理由によつて失当である。

二  前記のとおり、本件については国家賠償法一条一項が民法に優先して適用される結果、被告ら個人は、直接原告に対し損害賠償の責任を負う義務はないのであるから、原告の本訴請求は理由がない。

三  本訴請求は、日自振が競輪選手であつた原告に対してした本件処分に瑕疵があるか否かがその基礎となつており、この点については、つぎのような経過をたどつて、昭和四四年二月二五日東京地方裁判所において和解が成立し、一切の紛争が解決ずみなのであるから、原告にはもはや何らの請求権もないのである。すなわち、

(一) 日自振が昭和四〇年八月一一日原告に対し出場のあつせんを保留したところ、これに対し原告は、(1) 昭和四二年三月八日違法な人権侵害だと主張して東京法務局人権擁護局に調査と救済を申し立て、(2) 同年七月一〇日東京地方裁判所に競輪出場あつせん請求等仮処分申請(同年(ヨ)第七五〇五号)をした。そして、日自振が同年七月二六日原告の登録を消除したところ、これに対し原告は、(3) 同年九月四日右処分が違法であるとして東京地方裁判所に登録消除処分取消しの訴え(同年(行ウ)第一四三号)を提起し、さらに、(4) 同年一二月二六日右処分について執行停止の申立て(同年(行ク)第六三号)を行ない、これについては原告の申立てが認められたので、日自振は、東京高等裁判所に即時抗告(昭和四三年(行ス)第四号)をした。これとは別に原告は、(5) 昭和四二年八月九日右処分を不服として日自振に対し、行政不服審査法に基づき異議申立てをした。ところで、右(3) の訴えにつき東京地方裁判所民事第二部において審理中、原告は、日自振に対して、前記あつせん保留の段階までさかのぼつて本件処分が違法であるとの理由で損害賠償の請求を行ない、(6) 昭和四三年七月二六日東京地方裁判所にあつせんおよび損害賠償金の支払いを求める仮処分の申請(同年(ヨ)第七五六一号)をした。また、原告は、(7) 本件被告ら全員に対して、昭和四三年一二月二八日付内容証明郵便で本訴請求の内容と同旨の損害賠償を請求してきた。

(二) 右のような経過のすえ、右(3) の訴えの審理裁判所の和解勧告もあり、原告もまた和解による解決を希望したので、日自振はこれに応ずることとし、以上の(1) ないし(7) の一切の紛争について終止符をうつため、昭和四四年二月二五日原告と日自振との間に別紙記載のような条項の和解が成立し、同年三月双方によつて各和解条項が履行された。これによつて、原告は、日自振のみならず、被告らを含めすべての関係者に対し、日自振が原告に対してした本件処分に関する請求は一切しないことを承認したのである。

(三) しかるに、その後突如として提起されたのが本訴請求であり、これは、手続上単に被告らが右和解の当事者となつていなかつたことを奇貨として、いたずらに消滅し去つた過去の紛争を掘り起して損害賠償を請求する挙に出たものというほかなく、実質的には同一事件のむしかえしであり、日自振は、右和解成立後、本件処分に関する証拠資料を整理したので、被告らは、本訴において防禦・攻撃を行なう資料の大部分を失なつてしまつたのであつて、この一事をとつても本訴が著しく信義に反する請求であることは明らかであるといわなければならない。

(四) 就中、日自振は、右和解の履行として、原告に対し、昭和四二年七月二六日付でした登録消除処分を取り消し、示談金として五五〇万円にさらに一〇万円の上積みをして五六〇万円を支払つたのであつて、原告は、右取消しによつて右処分の日にさかのぼつて選手資格を回復したものとみなされ、示談金の支払いを受けたのであるから、今さら右消除処分の瑕疵を理由とする損害賠償請求権の発生を論議する余地はないのであり、また、あつせん保留処分の瑕疵を理由とする損害賠償請求についても和解条項5項によつて請求不可能となつたのであつて、本件処分に関する原告の損害賠償請求権発生の法的基礎はすべて消滅したのであるから、もはや原告は、被告らに対し何らの請求権も有しないものといわなければならない。

(被告らの主張に対する原告の反論)

一  本件につき国家賠償法が適用になるとの主張について

1 日自振は、国家賠償法一条一項にいう公共団体には当たらず、日自振と競輪選手との関係は公法関係ではない。そして、本件処分は公権力の行使に当たる行為でもないから、本件について同法一条一項の適用はない。

2 そうでないとしても、自転車競技法一二条の六には、「民法第四四条……の規定は、日本自転車振興会に準用する。」との規定があり、これは国家賠償法五条にいう他の法律の別段の定めに当たるから、結局本件について国家賠償法一条の適用は排除されることになる。

3 したがつて、本件につき被告ら個人が原告に対し、民法上の不法行為責任を負うのは当然である。

二  和解が成立し、紛争が全部解決したので、何らの請求もできないとの主張について  1 右被告らの主張事実中、(一)の事実(日自振が原告に対しあつせん保留処分をしたのち、和解にいたるまでの紛争の経緯)および(二)のうち、昭和四四年二月二五日原告と日自振との間に別紙記載のような条項の和解が成立し、同年三月双方その履行を了した事実は認める。

2 しかし、右和解は、被告らに対する本訴請求とは何ら関係のないものである。すなわち、

昭和四三年一二月二三日、裁判所から和解の勧告があつた際、原告代理人高木義明において、当時日自振の代理人であつた風間、雨笠両弁護士に対し、日自振のみならず本件被告らとの関係においても話し合いを進行させてほしい旨を申し入れたが、同人らから、同人らは日自振の代理人であり本件被告らとは無関係であるとの返事があつたので、原告は、やむを得ず同月二八日内容証明郵便をもつて、被告ら個人に対し、本訴請求と同一内容の請求をしたのである。そして、その後原告と日自振との間においてのみ和解手続が進行し、その成立をみるにいたつたのであるから、右和解が被告ら個人と無関係であることは明らかであり、右和解によつて原告の被告ら個人に対する損害賠償請求権が消滅するいわれはない。

第三証拠関係〈省略〉

理由

(被告らの本案前の主張について)

被告らの本案前の主張は、かりに、本件処分が被告らの違法行為にあたるとしても、それによつて原告に生じた損害の賠償については、国家賠償法が適用され、同法一条一項により日自振が損害賠償責任を負い、被告ら個人が直接原告に対し損害賠償責任を負うことはないから、本訴請求は被告適格を欠く者に対する不適法な訴えであるというのであるが、そのような関係は、本訴請求の理由の当否に関する実体法上の問題であり、訴訟法上の当事者適格の問題ではないから、被告らの本案前の主張は、採用することができない。

(本案について)

一  原告は、日自振の備える選手登録簿に競輪選手として登録されていた者であるところ、日自振から本件処分をされたこと、被告らが、それぞれ原告主張のとおり、本件処分が行なわれた当時の日自振の会長、副会長または理事の地位にあつたことは当事者間に争いがなく、また、本件処分について被告ら全員が日自振の役員として関与し、これを決定したものであるとの原告の主張事実を被告らは明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

ところで、被告らは、本件については国家賠償法一条が適用されるべきであり、被告ら個人が、直接原告に対し損害賠償責任を負うことはないと主張するので、まずこの点につき判断する。

二  日自振は、自転車競技法に基づき、「競輪の公正かつ円滑な実施を図るとともに、自転車その他の機械に関する事業および体育事業その他の公益の増進を目的とする事業の振興に資すること」を目的として設立された特殊法人であり(同法一二条、一二条の二、一二条の四、特殊法人登記令一条)、この目的を達成するために日自振が行なうべき業務の範囲は、同法によつて具体的に定められ(同法一二条の一六)、その業務の方法および役員の任免等について同法は通商産業大臣に広汎な権限を付与し(同法一二条の九、一二条の一八等)、その役員および職員は、同法により強い身分上の制約を受ける(同法一二条の一二、一二条の一四等)ものとされている。そして、競輪は、国が、「自転車その他の機械の改良および輸出の振興、機械工業の合理化ならびに体育事業その他の公益の増進を目的とする事業の振興に寄与するとともに、地方財政の健全化を図るため」に、一定の地方公共団体に限つてこれを行なうことを認めているもの(同法一条一項)であるから、このような競輪の公正・円滑な実施を図るための業務が、性質上行政事務に属するものであることも明らかである。したがつて、日自振は、国が右の事務を行なうため自らの行政機関を設ける代わりに、その事務を遂行すべき機関として設立した団体であつて、公共団体たる性質を有するものであるといわなければならない。

三  そこで、つぎに、日自振の業務のうち、競輪選手の登録および出場のあつせんに関する業務の性質について考察する。

1  自転車競技法によれば、競輪に出場する選手は、命令の定めるところにより、日自振に登録されたものでなければならず、日自振は、競輪の公正かつ安全な実施を確保するため必要があると認めるときは、命令の定めるところにより登録を消除することができる旨(五条一、二項)、日自振は、業務の方法として、競輪に出場する選手の検定の方法および合格基準、選手の出場のあつせんの基準、選手その他の競輪の実施に必要な者の養成などの事項を通商産業大臣の認可を受けて定める旨(一二条の一八)規定し、また、競輪の選手については、その競走に関する収賄行為を処罰する旨の特別の規定(二三条、二四条)がおかれ、競輪の公正とそれに対する社会一般の信頼を強く保護し、同法五条を受けて、前記登録規則には、日自振は、その行なう選手資格検定に合格した者を選手として登録する旨(一五条)、一定の欠格事由に該当する者は選手となることができない旨(一六条)選手が競走に関し不正な行為をしたり、競走の成績が不良であるなど一定の事由に該当するにいたつたときは、日自振は、その登録を消除することができる旨(二一条)、右の規定により登録を消除された選手は、日自振に異議の申立てができる旨(二九条)などの規定がある。そして、成立に争いのない乙第一一号証(前記業務規程)によれば、日自振は、競輪選手に関する業務および競輪に出場する選手のあつせんの基準に関して、つぎのような定めをもつ業務規程を設けていることが認められる。すなわち、日自振は、選手が一定の事由に該当するにいたつたときはその登録を消除するとして、詳細な消除事由を規定している(八七条)こと、競輪施行者が競輪を実施する場合には、日自振に出場選手のあつせんを依頼すべきものとし、日自振は、これに応じあつせん計画を作成し、その計画に基づいて出場あつせん選手を決定するものとし、このあつせんがなければ選手は競輪に参加することができない仕組みにしていること(一一三条ないし一一九条)、日自振は、選手が自転車競技法違反容疑により官憲の取調べを受けたときなど一定の事由に該当するときは、一定の期間当該選手に対する出場あつせんを保留することができ(一二六条)、また、選手が競輪に参加して、競走に支障を来たす不節制をしたときなど一定の事由に該当するときは、一年以内出場あつせんをせず(一二七条)、出場選手をあつせんした後でも、一定の場合には、あつせんを取り消すことができる(一三一条)ものとしている。

2  以上のような、競輪選手の登録および出場のあつせんに関し法律、命令およびこれに基づく業務規程の定めるところによれば、競輪選手は、日自振から選手登録簿に選手として登録され、かつ、出場のあつせんを受けることによつて、はじめて競輪選手として全国各地において開催される競輪に参加・出走しうることとなるのであつて、日自振の行なう登録および出場のあつせん等に関する措置を通じて、競輪選手は日自振の強い指導・統制に服しているということができ、このような公法上の特別の原因に基づいて成立した日自振と選手との関係は、公法関係であることが明らかであり、日自振が選手の登録を消除する行為および出場選手のあつせんを保留する行為は、いずれも競輪の健全・公正な運営を期するための強い公益上の必要から、法律によつて日自振のみに与えられた選手に対する包括的な支配権に基づく権力作用にほかならないものというべきである。

四  したがつて、日自振の業務執行機関である会長、副会長、理事(自転車競技法一二条の八、一項ないし三項)がその職務として競輪選手の登録消除およびあつせん保留の処分を決定する行為は、国家賠償法一条一項にいう「公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行う」行為であつて、その者の故意または過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、同条により、公共団体たる日自振が損害賠償の責任を負うものというべきである。そして、同条一項の適用がある場合は、当該公共団体が損害賠償の責任を負い、公務員個人は、直接被害者に対して損害賠償の責任を負わないものと解するのが相当であるから、本件被告らは、かりに原告主張の故意、過失があるものとしても、本件処分に関して直接原告に対し不法行為に基づく損害賠償の責任を負うことはないものといわなければならない。

五  原告は、国家賠償法五条、自転車競技法一二条の六の規定により、日自振の前記役員の違法行為による損害賠償請求については、国家賠償法一条の適用は排除されると主張する。しかし、自転車競技法一二条の六が、日自振について民法四四条の規定を準用しているのは、日自振の会長、副会長、理事などの役員による違法行為について、日自振が損害賠償責任を負う旨を一般的に規定した趣旨にすぎず、この規定によつて、日自振の役員が行なう公権力の行使による違法行為の場合の国家賠償法一条の適用を排除した趣旨と解すべきものではない。原告の主張は、独自の見解によるものであり、採用することができない。

六  よつて、その余の点について判断するまでもなく、原告の被告らに対する本訴請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 杉山克彦 吉川正昭 石川善則)

(別紙)

1 被告(日本自転車振興会)は、昭和四二年七月二六日付で原告に対してした競輪選手登録処分は、これを取消す。

2 原告は、昭和四四年三月一五日までに競輪選手登録消除の申請をすること。

3 被告は、原告に対し示談金として金五百五拾万円の支払義務あることを認め、原告の前項の競輪選手登録消除の申請と引換にこれを支払うこと。

4 原告は、当庁昭和四三年(ヨ)第七五六一号仮処分申請を取下げること。

尚、昭和四二年八月九日付競輪選手登録消除処分に対する行政不服審査法に基づく異議申立は、これを取下げる。

5 本件に関して原告と被告との間には本和解条項に定める以外は何らの権利義務関係のないことをそれぞれ確認する。

6 訴訟費用並びに和解に要した費用は、いずれも当事者双方の各自弁とする。

以上

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